金龍ラーメン(難波)
大阪のラーメン不毛時代の覇者である。
かつて、エースコックのスーパーカップがめっちゃ旨いとされていた頃の話だろうか。
難波のあちこちに店舗があって。
ドラゴンボールの神龍というか、まんが日本昔ばなしのオープニングの龍みたいなドラゴンのオブジェが壁に突き刺さっている。
しかも、店舗によってドラゴンの形状が異なっている。
「おいしいのか?」
といわれると、二郎系よりも返答に困る。
強いていうならだけど。
「おいしくはない!」
でも、間違いなく大阪のラーメンを代表していた時期があった。
ある意味では今でもそうかもしれない。
実際、一時期はインバウンドの外国人観光客でそれはもう大繁盛していたし。
きっと笑いが止まらんくらい儲かってたやろな。
ちもやん的にはマズ・ミシュランの大阪代表であり筆頭でもある。
食事の満足度というのは味以外の要素もけっこうあるからね。
シチュエーションやら記憶とか。
コロナ禍でインバウンドの外国人観光客が消えたミナミ。
外国人観光客の大行列の消えた金龍ラーメンへ。
ここはドラゴンが突き刺さってないね。
以前はドラゴンが描かれていた気がするけど、今は赤壁になっている。
メニューはラーメンかチャーシューメン。
基本のラーメンがいっきに200円も値上げされている。
店内は相変わらず海の家みたい。
畳に座って食べる。
券売機で購入後、食券を厨房のカウンターへ。
無料で食べ放題のライスやらニンニク、ニラ、キムチの有無を聞かれる。
あとは海の家と同じ仕組み。
呼ばれたら厨房のカウンターへ取りに行って、それらを自分でテーブルへ運ぶ。
とんこつラーメンですね。
いただきます。
四半世紀ぶりかもしれん。
でも、口に運ぶ前にニオイでなんか味を思い出したわ。
今、言語化するとしたら、あれやな。
このとんこつスープはスガキヤから魚介スープを引いた感じやな。
あっさりというか、淡麗といか、うすい。
最初からノビ気味の麺。
そこにカスカスのチャーシューと波平やオバQの毛ほどのモヤシ。
というわけで、序盤から味変クッキングです。
刻みニンニク、ニラ、キムチ。
いずれもインパクトがあるやつ。
ちなみにこのキムチがめっちゃ辛いねん。
発酵とアミノ酸で甘味が云々とかなしのストレート。
これらをぶち込むことでスープがどんどんカオス化していきます。
でも、タイやベトナムとかアジアの人は卓上で味変するの大好きやからね。
卓上で個々に調理することで料理が完成するみたいな。
それはもう食文化の違いともいえる。
そういう点では外国人観光客ウケがいいのはすごく理解できる。
つい、勢いで頼んだ無料で食べ放題のライス。
これがまた遠い記憶を喚起させる。
そう。
めっちゃマズイのである。
相変わらずというか、金龍ラーメンは安定してご飯がベチャベチャなのである。
水加減だか炊き方がレシピになっているのだろうか。
四半世紀を経ても、ここより不味いライスを提供する飲食店を知らんわ。
もはやワザとだとしか思えない。
それもこれも金龍ラーメンのすべてがマズ・ミシュランの構成要素なのだろう。
マーケティングや商売の世界は奥が深い。
事実、GWで金龍ラーメンは繁盛しとるしね。
「今日は休憩ナシかも~?」
と店長らしい兄ちゃんがバイトのベトナム人に言っているのが聞こえてくる。
その昔。
バブル期のミナミの繁華街という土地柄に24時間営業で屋台風の金龍ラーメンとの相性がとてつもなくよかったんやろうね。
それに当時の大阪は車もバイクも環状族や暴走族だらけ。
ヤンキー世代の全盛期というか、そもそも若者が多い時代やったから。
深夜に繁華街をウロウロしている連中が現在と比較にならんくらい多かったんよね。
そら深夜に腹も減るだろうし、ニラとキムチも食べ放題だし、畳に座ってダベりたくもなるわ。
スマホもメールも無い時代に待ち合わせや合流場所としてもドラゴンのオブジェは分かり易かったろうしね。
当時の道頓堀にあった神座もビニールテントで覆われたような屋台風で、どこぞの海の家みたいな金龍ラーメンもそうだけど、その代わりにどっちも500~600円でそこそこ安かったんよね。
その神座と金龍ラーメンのどっちが旨いか論争も一時期あったな。
結果は火を見るより明らかなんやけど。
それでも神座のあの独特なスープをマズイという保守的な金龍ラーメン派もけっこういたのが驚きでした。
高校生の頃に付き合いで何度か金龍ラーメンを食べたけど、うまかっちゃんを薄くしたみたいなスープで、終盤はニンニクとニラとキムチでカオスになるし、正直なところおいしいと思ったことないな。
一方の神座は金龍ラーメンと違ってもの凄い衝撃やったもんな。
ラーメンって、こんなにおいしいものなのかと。
連れて行ってくれた友人のシマッチに感謝したくらい。
その後、神座は白衣と調理帽の店員と照明の明るい店舗でどんどん広域に多店舗化。
金龍ラーメンは、そういうので勝負していない。
なんというか、海の家や縁日の屋台に旨さとか求めてないよね。
金龍ラーメンのはなんかそういう感じ。
24時間営業の海の家のラーメンや縁日の焼きそばやな。
それはそれで大阪の萌愛ソウルフードともいえるポジション。
萌愛・マズ・ミシュラン。
かつての金龍ラーメンを食べていた世代が子や孫を連れて行ったりね。
そして、その子や孫があまりおいしくなさそうに食べる様子を見て、ちょっと妙な安心感と満足感を覚えたりして。
実際、ちもやんの孫の世代にも金龍ラーメンは生き残ってそう。
ご馳走様でした。